「要介護度が高いほど家賃が安い」老人ホームのカラクリ|入居前に家族が知っておきたいこと

「要介護度が高いほど家賃が安い」老人ホームのカラクリ 入居前に家族が知っておきたいこと 家族のための介護保険

どうも、CM-T(@freedas_)です。

「要介護4・5の方は月額○万円引き」

「医療的ケアが必要な方も歓迎」

最近、こんな広告を出す老人ホームが増えています。

普通に考えると、介護の手間が増えるほど費用は高くなるはず。

なぜ逆に費用が安くなるのでしょうか?

 

この記事では、現役のケアマネジャー(介護支援専門員)の立場から、

このタイプの施設の仕組みと、入居前に家族が確認しておきたいポイントを、

できるだけ公平にお伝えします。

 

あくまでも、このような施設を

「危ないから避けろ」という話ではありません。

 

行き場のない重度の方の貴重な受け入れ先として、

機能している側面が確かにあります。

 

ただ、もしも入居を検討する際に、このような施設の仕組みを知った上で選ぶのと、

知らずに選ぶのとでは、入居後の納得感がまったく違います。

 

同じような料金モデルの施設であっても、

サービスの質など様々な施設(会社)が存在します。

この記事で少しでもより良い施設探しのお役に立てれば幸いです。

 

1. どんな施設のこと?

多くは「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と呼ばれる施設です。

特別養護老人ホーム(特養)や介護付き有料老人ホームと違い、

建物の中で提供される介護は「入居者が個別に契約する外部サービス」という建前になっています。

 

そして、その外部サービスとして「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」(以下、定期巡回)を使うのが、このモデルの特徴です。

定期巡回は、1日に何度か短時間の訪問を行い、

必要に応じて夜間も駆けつけ、看護師とも連携する24時間型のサービスです。

2. なぜ要介護度が高いほど安くできるのか

答えはシンプルで、

「介護保険から施設に入るお金が、要介護度が高いほど多いから」です。

 

定期巡回は、訪問回数に関係なく、要介護度ごとに月額が定額となる「包括報酬」です。

ちなみに要介護5で看護も含めると、月に30万円近い介護報酬が事業者に入ります。

(利用者の自己負担は原則1割、残りは介護保険から支払われます)

要介護1なら、約4分の1程度の利用料となります。

 

さらに、同じ建物の中に利用者がまとまっていれば、訪問の移動時間はほぼゼロ。

少人数のスタッフで、多くの入居者を回せます。

 

ここで生まれた利益の一部を「家賃の値引き」として還元しているのが、

「要介護度が高いほど安い」の正体です。

つまり実質的には、介護保険の給付が家賃の原資になっている、ということです。

もうひとつの理由:食事にかかるコストが下がる

実はもう一つ、あまり語られない理由があります。

要介護度が高い方ほど、口から食事をとらないケースが増えることです。

 

経鼻経管栄養や胃ろうの方は、施設の厨房で作る食事を食べません。

栄養剤は医師の処方で出ることが多く、医療保険側の扱いになります。

施設から見れば、食材費や調理の手間が減り、

「食事で儲からない代わりに、食事でコストもかからない」入居者になります。

 

ただし、これはあくまで補助的な要因です。

食事介助が必要な方に対しては、ケアの手間はむしろ増えるなど、

同じ介護度であっても、必要な食事量や介護量には差があります。

値引きの主な原資はやはり介護報酬の方です。

「食費がかからない分、家賃を下げられる」のは、

包括報酬の利益に上乗せされる程度と考えてください。

3. 良い面もはっきりある

この仕組みの負の側面だけを書くのは公平ではないですし、私の意にも反します。

ここでこういう施設の良い側面を挙げておきます。

  • 特養は申し込んでも順番が回ってこない、病院からは退院を迫られる、家族の介護はもう限界。そんな方の受け皿になっている。
  • 経鼻経管栄養、胃ろう、たん吸引など、医療的ケアが必要で他の施設に断られる方を受け入れている施設が多い。
  • 年金が少ない方でも、要介護度が高ければ入居できる価格になっている。
  • 現場で働く看護師や介護職は、経営方針とは関係なく、本気で入居者を介護支援している人も多い。

「ここがなければ在宅で共倒れだった」という家族は、

実際にたくさんいるでしょう。

その意味で、このモデルには社会的な役割があると考えます。

 

4. 家族が知っておきたい4つのリスク

このような仕組みの施設を選んで入居するとき、

具体的にどのようなリスクがあるのかをお伝えします。

(1)「サービスを減らすほど儲かる」構造になっている

包括報酬は、訪問を何回しても収入が同じです。

裏を返せば、訪問を減らすほど利益が増えます。

 

もちろんきちんとやっている施設が大半だと思います。

しかし構造上、サービスが薄くなりやすいことは知っておいてください。

外からは訪問回数の実態が見えにくいのも難点です。

(2)状態が良くなると家賃が上がる

要介護度が下がる(=元気になる)と、値引きがなくなって家賃が上がる仕組みなので、注意が必要です。

 

本来、介護は「本人ができるだけ自立する」ことを目指すものです。

しかしこのモデルに限らず、介護の世界では事業所側にその動機が働きにくいのです。

なぜなら、「介護度が高いほうが儲かるから」です。

 

家族としては、「改善したら費用がどうなるか」を事前に把握しておく必要があります。

(3)ケアマネジャーも同じ系列になりやすい

入居の条件として「ケアマネジャーは施設の系列に変更してください」と言われることがあります。

 

もちろん系列のケアマネが悪いわけではありませんが、

ケアプランが施設の都合に寄りやすくなるのは否定できません。

 

また、本来そのように事業所側で同じ会社のケアマネを利用するよう誘導するのはご法度です。

ケアマネを選ぶ権利は、あくまで本人・家族にあります。

(4)制度改正で前提が変わりうる

国はこの構造を問題視しています。

2024年度の介護報酬改定では、同じ建物内の利用者に集中してサービスを提供する事業所への減算が強化されました。

 

次の改定でさらに締め付けが強まる可能性は高く、

「今の家賃がずっと続く保証はない」と考えておいた方が安全です。

5. 見学のときに聞いてほしい5つの質問

施設のパンフレットや紹介サイトは、この辺りをほとんど書いていません。

見学の場で、次の質問をしてみてください。

答え方で、施設の姿勢がかなり分かります。

  1. 1日に何回、何分くらい訪問がありますか?夜間はどうですか?
    具体的な数字が出てこない、または「状態に合わせて」だけで終わる場合は要注意です。
  2. 要介護度が下がった場合、月額費用はどう変わりますか?
    正直に説明してくれるかどうかを見ます。
  3. ケアマネジャーは今の人のままでも入居できますか?
    「原則は系列で」と言われたら、その理由を聞いてください。
  4. 看護師は常駐ですか?連携先の訪問看護ステーションですか?夜間の医療対応は誰がしますか?
    経管栄養やたん吸引が必要な方は、ここが最も重要です。
  5. 介護保険の区分支給限度額は、どのくらい使うことになりますか?
    ほぼ満額を使う前提なら、他のサービス(訪問リハビリなど)を追加する余地がなくなります。

これらの質問に淡々と答えられる施設は、

少なくとも「聞かれて困ること」がない施設です。

 

逆に、質問を嫌がる、話をそらす、契約を急がせる。

そんな反応があれば、他の施設とも比較してから決めることをおすすめします。

まとめ:「他になかった」ではなく「比べた上で選んだ」に

「要介護度が高いほど安い」施設は、詐欺でも違法でもありません。

介護保険の仕組みを最大限に使った、ひとつのビジネスモデルです。

そして、制度の受け皿が足りない今、そこに救われている人がいるのも事実です。

 

ただ、その仕組みを知らずに入居し、

あとから「サービスが思ったより少ない」「元気になったら費用が上がった」と戸惑う家族を、

私は仕事の中で見てきました。

 

大事なのは、「そこしかなかった」で決めるのではなく、

仕組みを理解した上で「比べて選んだ」と言える状態にしておくこと。

この記事が、その助けになれば幸いです。

 

迷ったら、担当ケアマネジャーか、地域包括支援センターなどに相談してみてください。

施設側の人間ではない第三者の意見を、必ず一度は挟むことをおすすめします。

 

※本記事は特定の施設・事業者を指すものではなく、制度の一般的な仕組みについて解説したものです。個別の施設の評価については、必ず見学と複数の相談先での確認をお願いします。

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