こんにちは、CM-T(@freedas_)です。
「親の家に手すりをつけたいんだけど…」
そう思って調べると、必ず出てくるのが
「介護保険で20万円まで使える」
という話です。
ただ、この「20万円」には、
思っているよりクセがあります。
現役ケアマネとして家族の相談を受けていて、
よくあるつまずきや誤解が3つあります。
それらを順番に整理します。
① まずは工事して、それから相談。…それ1円も出ません
これが結構あるんですが、一番取り返しがつきません。
介護保険の住宅改修は、工事を始める前に市区町村へ申請しておくことが条件です。
先に工事を終えてしまうと、内容がどれだけ適切でも、原則として支給されません。
「親が転んでしまって、また転んだら危ないから急いで手すりをつけた」
気持ちとしてはとても自然なのですが、
制度としては20万円の枠が使えなくなります。
事前の申請には、ケアマネジャー等が書く「住宅改修が必要な理由書」が必要です。
工事の前にケアマネに一本連絡を入れるだけで、この失敗はほぼ防げます。
※ちなみに、申請から実際に手すりがつくまでには、おおむね2週間から1か月程度かかりますが、その間は、工事のいらない手すり(据置型・突っ張り型)をレンタルで利用できますので、ご安心を。
レンタルを使うにはケアプランが必要になりますので、これも担当のケアマネに相談してください。
担当のケアマネがいる場合は、必ず見積もりを取る前の段階で声をかけてください。
まだ介護保険を使っていない場合は、お住まいの市区町村の窓口か、地域包括支援センターが入口になります。
入院中・賃貸のときは、ひと手間増えます
入院中は、退院して自宅で生活することが前提になるため、自治体によって扱いが分かれます。
退院日が決まってから相談するのが安全です。
それから、賃貸住宅など家の名義がご両親本人でない場合は、
所有者(大家さん・家族)の承諾書が必要になります。
マンションの共用部分に手すりをつけたいときは、管理組合などの許可も要ります。
この場合は特に時間がかかるところなので、早めの相談と申請が必須です。
② 20万円は「1回で使い切る」ものではありません
20万円は工事1回あたりの上限ではなく、1人あたりの合計の上限です。
上限に達するまでは、何回かに分けて使えます。
たとえば、今回トイレと玄関に手すりをつけて8万円使ったなら、
残りの12万円はその後のために取っておけます。
そして実際、分けて使うほうが合理的なことが多いです。
理由は単純で、体や動きの状態が変わるからです。
今いちばん必要なのは玄関の手すりでも、
半年後に必要になるのは浴室かもしれません。
先に業者の提案どおり20万円を使い切ってしまうと、
本当に困ったときに手が打てなくなります。
もちろん、最初からまとめて工事したほうが一回当たりの工事費としては、
安く済む場合もあります。(※最近は人件費が高騰してます)
必ずしも「絶対に分けるべき」という話ではありません。
ここで言いたいことは、「予算があるから全部使いましょう」という提案には、一度立ち止まっていただきたいということです。
自己負担は1割とは限りません
20万円のうち、自己負担はその人の所得に応じて1割から3割にわかれています。
1割負担の方なら、20万円の工事で自己負担2万円。(実質18万円支給)
3割負担の方なら6万円です。(実質14万円支給)
さらに20万円を超えた分は全額自己負担になります。
③ 工事費の支払い方が2種類ある
償還払い
いったん工事費の全額を自分で払い、あとから保険分が戻ってくる方式です。
20万円の工事なら、一度20万円を用意する必要があります。
そして、工事が済んだら領収書を市町村に提出して、
負担割合に応じて9割から7割が戻ってきます。
自治体によっては、戻ってくるまでに申請から1か月以上かかることもあります。
この支払方法は、一旦大きな額のお金を準備する必要がありますが、原則はこの方法となります。
受領委任払い
最初から自己負担分(1割から3割)だけを業者に支払う方式です。
こっちは手元に準備しておくお金は少なくて済みます。
ただし、この方式は市区町村によって、また業者によって使えるかどうかが違います。
すべての自治体で使えるわけではありません。
お住まいの市区町村が受領委任払いに対応しているか、その業者が登録しているかは、事前に確認しておいてください。
ここを知らずに「20万円を先に用意できないから諦める」というケースもあったと聞きます。
20万円がもう一度使える2つのケース
住宅改修の上限額20万円、
使い切ったら終わり、ではありません。
例外が2つあります。
①介護の程度が3段階上がったとき(3段階リセット)
初めて住宅改修をしたときの認定区分(着工日の時点)を基準にして、「介護の必要の程度」が3段階以上上がると、もう一度20万円まで使えます。
2回目、3回目と改修していても、基準はずっと「初めて改修したとき」のままです。
ここを「直近の改修が基準」と勘違いして、使えるはずの20万円を諦めてしまうケースがあります。
ちなみに段階の数え方は以下です。
第1段階:要支援1
第2段階:要支援2・要介護1
第3段階:要介護2
第4段階:要介護3
第5段階:要介護4
第6段階:要介護5
要支援2と要介護1が同じ段階にまとめられているところが、間違いやすいポイントです。
たとえば要介護1のときに改修した方なら、
のちのち要介護4になった時点でリセットされて、
もう一度20万円まで使えます。
ただし注意点があって、
この例外は生涯に1回限りです。
そして、自動的にお金が戻ってくるわけではなく、
その状態になってから実際に工事をして初めて使えます。
②引っ越したとき(転居リセット)
転居した場合は、前の住まいでいくら使っていたかに関係なく、新しい住まいで改めて20万円まで使えます。
回数の制限もありません。
つまり引っ越すたびにリセットで20万円が復活します。
ただし、前の住まいに戻った場合は、
転居前の使用状況が復活します。
「一度引っ越して、また戻る」で枠が増えることはない、ということです。
対象になる工事は6種類
家の中の工事なら、何でも介護保険が使えるわけではありません。
住宅改修20万円枠の対象はこの6種類です。
・手すりの取付け
・段差の解消
・滑りの防止、移動の円滑化等のための床材の変更
・引き戸等への扉の取替え
・洋式便器等への便器の取替え
・上記の工事に付帯して必要になる工事
逆に言うと、浴室の全面リフォームや、介護に直接関係しない模様替えは対象外です。
「ついでにきれいにしましょう」という提案が混ざっていたら、
どこまでが保険の対象で、どこからが自費なのかを必ず分けて見積もってもらいましょう。
業者選びで、家族が確認したい3つのこと
1. 見積もりが保険対象と自費で分かれているか
一式いくら、という見積もりは避けたほうが無難です。
2. 事前申請の手続きを一緒にやってくれるか
慣れている業者なら、ケアマネとの書類のやりとりに手馴れています。
「工事は明日からでもできますよ」と申請前に言ってくる業者は、制度を分かっていないか、分かっていて言っていないかのどちらかです。
3. 本人が動くところを見てから提案しているか
実はここが一番大事です。
本人が実際に立ち上がったり、またいだりするところを見ずに、
図面だけで手すりの位置を決めている提案は、
あとで「使えない手すり」になりがちです。
手すりは「つければいい」というものではなく、
位置が数センチずれるだけで使いづらくなったり、
かえって転倒のリスクが高まることもあります。
この話は長くなるので、次回の記事で詳しく書きます。
まとめ
・工事の前に申請する(これだけは絶対)
・20万円は分けて使える。使い切る必要はない
・支払い方は2種類。受領委任払いが使えるか先に確認する
・3段階リセットと転居リセットという例外がある
・対象は6種類の工事だけ
細かい運用は市区町村によって違います。
最終的な判断は、必ずお住まいの市区町村の窓口か、担当のケアマネジャーに確認してください。
それでも、「工事の前に相談する」ことさえ守れば、大きな失敗はまず起きません。
次回は、作業療法士の視点から「手すりをどこにつけるのベストなのか」その判断方法などを書きます。


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